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京都から女性・経済・文化を考える

講演録


第1部

「京都から女性・経済・文化を考える」シンポジウム

「京都から女性・経済・文化を考える」シンポジウムを9月20日、京都市東山区にある泉涌寺内別格本山「雲龍院」で行いました。2005年に国立京都国際会館で「日中韓女性経済会議」を開いてから来年で10年を迎えるにあたり、日中韓女性経済会議実行委員会が当時のテーマであった「女性と経済」「文化」に特化したシンポジウムを再び京都で主催することにしたものです。9月12日から東京で開かれた「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」のシャイン・ウィークス公式サイドイベント(*)としても登録されました。
関東、関西など各地から参加者が大勢会場に集りました。まずは、外務省総合外交政策局女性参画推進室の黒坂佐紀子外務事務官が国際シンポの様子を報告。次に、来年京都で開催される琳派400年記念祭を盛り上げていこうと、ゼネラルプロデューサーの山本壯太氏と、雅楽奏者・作曲家の東野珠実氏による対談が行われました。
その後、懇親会場で日本の活力を生むウーマノミクスや文化を継承する力、女性の雇用などさまざまな観点から参加者たちは情報を交換し、交流しました。
シャイン・ウィークス(Shine Weeks) 関係府省庁、地方自治体、市民団体、学校・学生団体などにより、女性関連イベント(シンポジウム、セミナー、映画、パフォーマンス、食・観光地の日本文化等)を開催。日本全体で女性の活躍促進のムーブメントを起こしていく取り組み。

第1部 講演会

「女性が輝く国際シンポジウムを終えて」
黒坂佐紀子 氏
くろさか・さきこ
外務省総合外交政策局女性参画推進室 外務事務官

Photo

美しい庭に面した「大輪の間」で、外務省の黒坂佐紀子外務事務官を迎えての講演会。ちょうど1週間前に終えたばかりの「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」の報告を参加者たちは熱心に聞き、盛んに質疑の手が上がった。「来年以降も国際シンポを開催してほしい」「地方都市で女性イベントを活発化するためにイベントのロゴのデザインの工夫を」などと活発に意見や提案が出された。

首相の国連スピーチからWAW!開催へ
 こんにちは。外務省の女性参画推進室の黒坂と申します。本日は,お招きいただき,ありがとうございます。この数か月、シンポジウムの準備に忙殺されていたため、今日は久しぶりに明るい時間帯に外出でき、しかも京都のお寺の美しいお庭をみながらお話しできることを嬉しく思います。簡単に自己紹介いたしますと、私は2002年にネパールに移住し、現地の教員やJICAスタッフとして働き、夫との間に二人の子どもに恵まれました。京都に来るとネパールを懐かしく思い出します。ネパールも京都の景観と似ていてお寺が多く、狭い間口を通り抜けると中が広くなっています。今日はそんな不思議なご縁を感じつつ、私が関わった広報やシャイン・ウィークスという観点から皆様にWAW!のご報告をさせて頂けたらと思います。
 外務省には,今年の5月19日に入省しました。当初から、9月に開催された「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」(略称:WAW!Tokyo 2014)の広報担当を務めました。WAW!(ワウ)は、昨年の安倍首相の国連総会でのスピーチを受けて、より機運が高まり,女性が輝く社会をどうつくっていくのか、国内外の女性の分野におけるリーダーたちが議論をし、メッセージを発信していくために開催することになりました。
 その中心的役割を果たした外務省の女性参画推進室は、さまざまな女性政策に外交という視点から取り組むため、今年4月22日に発足した新しい部署です。WAW!だけでなく、UNウィメンとの連携、平和、暴力など様々な女性の課題に取り組んでいます。組織も新しく,WAW!開催のアイデアも新しかったため、ゼロからのスタートでした。女性参画推進室のスタッフは室長以下たった6人で、そもそもWAW!のための予算はありませんでした。そこで,6月にWAW!準備事務局を立ち上げ、WAW!で充実した議論の場を提供できるようにするため、外務省の他の課からも事務局に来てもらい、予算をかき集め、延べ100人以上のチームで開催に向け動きました。

シャイン・ウィークスで、より広く、より多く

 最初のうちは、World Assembly for Women in Tokyoの頭文字をとったWAW!(ワウ)の認知度は低く、どう読むのか聞かれることも多々ありました。外務省のWAW!専用ホームページに加え、フェイスブックも立ち上げ,広報しました。また、WAW!準備事務局には、日程管理班やサブ班、ロジ班などがあり、要人の日程管理から会場の設営、スピーチ案の作成などそれぞれの班が一つずつ作業を進めていきました。初めて開催したイベントの上、いろいろなハプニングもあり、ぎりぎりまで調整が必要でした。そのため、先ほど参加者をもっと早く知りたかったというコメントもありましたが、なかなかプログラムをホームページでご紹介できず、みなさんにやきもきさせたと思います。また、WAW!のロゴにTokyoが入っていることが、地方イベントでロゴを使用する際に違和感があったとのご指摘を受けましたが、東京にいるだけでは分からないこともあり、本日、こちらに伺い率直なコメントやお気づきをいただき感謝いたします。戻り次第ご指摘を共有させていただきます。
 さて、WAW!は12日の公開フォーラムや13日のハイレベル・ラウンドテーブルでの議論だけでなく、「シャイン・ウィークス」も開催されました。これは,WAW!の趣旨に賛同していただいた女性に関するイベントで、全国各地から企画・開催の声が届きました。9月8日から19日をシャイン・ウィークスのコア期間と設定しましたが、この時期に前後するイベントも含め、全国で120件がWAW!公式サイドイベントとして登録されました。東京だけで盛り上がっても仕方ありませんので、地方でのイベントも積極的に受け入れました。参加者のオリジナルかつ工夫されたイベント作り・発信により,女性が活躍するムーブメントは多くの参加者を得ました。各イベントでは,WAW!のポスターやロゴを活用いただきました。
 もっと学生のエネルギーを活用して欲しいというコメントがありましたが、今回の参加者の方々は既に女性に関するさまざまな課題に自身でご経験されている方々であり、年齢は比較的高かったです。もちろん、より若い世代、これからの社会を作っていかれる方々の意見も、積極的に取り入れていく必要性を感じています。「参加」という点においては、WAW!学生ボランティアを外務省のホームページ上で公募し、16人の方に会場での誘導や受付をしてもらいました。参加された方々から「国際舞台を目の前で見れてとても楽しかった」というコメントをいただきました。また、シャイン・ウィークスで放映する映像を撮影するために,福岡からも3人の学生に来ていただきました。これからも地方との連携やイベントが大切だと考えています。

国内外の知見を共有し、活発に議論
 WAW!は、日本国政府、日本経済団体連合会、日本経済新聞社、日本国際問題研究所の4者による共催と日本経済研究センターによる後援で実現しました。国内外から女性分野で活躍するリーダーたちが出席し、女性の活躍促進のための取り組みについて議論が行われました。
 12日午後、経団連会館で行われた公開フォーラムの冒頭で総理がスピーチし、女性の活躍促進のための取り組みを一層推進していく意思を発表し、参加者への行動を呼びかけました。総理のスピーチ内容は外務省のホームページにも掲載されていますので、ご関心のある方は読んでいただければと思います。続いて、クリスティーヌ・ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事から「女性のエンパワメントによる経済効果」と題する基調講演をいただきました。同専務理事は、経済回復の鍵は女性の力の活用にあると述べ、女性の経済的隔離のコストと経済的地位向上にかかわる施策などについて説明しました。さらに、安倍昭恵総理夫人とシェリー・ブレア氏(女性のためのシェリー・ブレア基金創設者、元イギリス首相夫人)が、「女性が輝く社会に向けて」のテーマで特別対談を行いました。その後、ヒラリー・クリントン前米国務長官からのビデオメッセージをキャロライン・ブービエ・ケネディ駐日米国大使がご紹介されました。パネルディスカッションでは、「女性の活躍が企業競争力を高める」という題で、榊原定征経団連会長、小林いずみさん(ANAホールディングス社外取締役)、ロハナ・ロズハンさん(アストロ業務執行取締役兼CEO)、ケビン・マカーンさん(マッコーリー・グループ会長)、アン・スウィーニーさん(ディズニー・メディア・ネッワーク共同会長、ABCテレビ社長)が登壇しました。このような盛りだくさんの内容を会場で見たいと数多くの方が、経団連会館での公開フォーラムに応募されました。
 翌13日は、会場を六本木ヒルズに移して、2つの分科会に分かれてハイレベル・ラウンドテーブルを行いました。分科会1は「経済における女性の活躍推進」、分科会2は「グローバルな課題と女性のイニシアティブ」で、それぞれ50人ほどが参加し,その後、さらに小グループに分かれて議論しました。
 外務省はグローバルな課題においては専門だが、女性と経済では専門性に欠けるのではというコメントがありましたが、外務省が事務局をしたことで、世界各国からの女性の分野で先端を行く参加者を招くことができ、それにより、いろいろな国の現状を聞き、今、日本にある課題が実は他国でも共通性を持っていたり、その解決策に新たな視点を持つことができたのではないかと思います。これは、グローバルでも経済の分野でも同じで、国内外で女性が向き合っている課題に新しい知見を求めたからかもしれません。24か国の方が参加し、日本人約50人強、外国人約40人強の計約100名が参加する会議となり、文化というコンテキストは異なっても、共通の課題を認識することができたと思います。女性に関する国内政策は、内閣府の男女共同参画局が担当しており、今後も連携していきたいと思います。

WAW!そしてこれから

 「最初に結論ありき」でなく、多面的に議論した場から、参加者からの提案が生まれました。小グループの議論から出た提案を踏まえ、議長を務めた岸田外務大臣が「WAW!To Do」を発表しました。お手元に配りました資料をご参考にされてください。

おわりに
 自分が当初から関わってきたシャイン・ウィークスに今日、参加できることができて、嬉しいです。ふと「女性と経済・文化」というタイトルから、一つ気が付いたことがあります。WAW!では、「女性と経済」、「グローバルな課題」を取り上げましたが、文化そのものはあまり意識的にフォーカスされなかったように思います。しかし、女性とアイデンティティという意味では、「文化」という視点も「女性が輝く社会」を作っていくためには、大事なことであると再認識しました。みなさんの先見的な取り組みが成功されることをお祈りします。ご清聴ありがとうございました。


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