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Women's Global Economy Conference 日中韓女性経済会議
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06年開催講演録他
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第2部 ディスカッション
テーマ2<IT・通信>
『日中韓のIT事情 —イノベーションと女性の経済活動』

●日本:岡田昭彦 氏(東日本電信電話株式会社 取締役 )
●日本:田中祐介 氏(株式会社フラクタリスト 代表取締役社長)
●韓国:宋 恵子 氏(KoreaVenture Business Women`s Association )
●モデレーター:杉田定大 氏(内閣官房知的財産戦略推進事務局 内閣参事官)


■日本 岡田昭彦 氏 (東日本電信電話株式会社 取締役 )
『日本のブロードバンド事情の変遷と方向性 』

私が籍を置くNTT東日本は、日本の東半分で電気通信サービス、キャリアサービスを行っています。そこで、ブロードバンド事情を中心にお話をさせていただきます。

日本はブロードバンドついては、韓国におくれをとった、と言われてきました。遅れていた理由の1つは、NTTがDSLよりも光ファイバー、オプティカルファイバーでブロードバンドを進めようとしていたことにあります。しかし、現在は急速に光ファイバー、オプティカルファイバーが進んでいます。私が担当している神奈川県でも、350万の固定電話に対し、光ファイバー、Bフレッツが30万を超えました。つまり固定電話の約10パーセントは光ファイバーにしたことになります。NTTのほかにもTEPCOやU-SENなどのプロバイダーがあり、競合するコンペティターはたくさんあります。NTT光ファイバーのシェアは約50%強です。しかし、残念ながら日本では今なおDSLが先行していて、全体の半数の世帯にブロードバンドが入っているものの、約8割の世帯がDSLもしくはケーブルテレビでつないでいるという状況です。

中国の状況をみてみると、ブロードバンド世帯が6千万から7千万。ややもすれば1億近いといわれていますが、人口も多いので、普及率はまだ2割弱というところ。ただし普及のスピードは急速。アメリカのブロードバンドは6割ほどがケーブルテレビ、残りはDSLとなっています。

携帯電話の普及率は、今のところ韓国が一番で、75%ほど。複数持っている方もいるでしょうが、おそらく国民の半分以上が携帯電話を持っていることになろうかと思います。日本も携帯電話の普及率は急速に伸び、現在約70%。アメリカは60%ほどです。中国は台数は3億台以上ですが、普及率は25%ほど。ただ、上海や北京、広州といった沿岸部の都市に限れば、おそらく韓国や日本なみではないかと思われます。

以上、通信事情を端的にあらわすのがブロードバンドと携帯電話であろう、ということで、その普及率を中心に紹介させていただきました。

つまり、インフラはだいたい整ったということになります。5年前、10年前の固定電話だけの時代から考えてみると、ずいぶん大きく変わったものです。日本、中国、韓国の3カ国も、世界のブロードバンド先進国に入ってきているということです。今後は、その特質や事情をいかしつつ、どのように活用していくかが課題となります。その先進性をどうやってビジネスにつなげていくか。互換性をすすめて、3カ国でコラボレーションし、IT、ICT、ユビキタスといった次世代のサービス、次世代のビジネスへのキーにしていきたいものです。


■日本 田中祐介 氏 (株式会社フラクタリスト 代表取締役社長)
『ベンチャー企業が取り組む、中国とのコラボレーション 』

日本、韓国、中国は、世界的にみても携帯電話に対する興味、関心が高い地域です。

この地域が力を合わせてビジネスできないか、ということで会社をやっています。まず簡単に、私が取り組んでいるソフトウェアのビジネスがどういう分担で行われているかということを説明させていただきます。

日本では1999年にiモードというサービスが登場し、携帯電話のインターネット利用が盛んになりました。

「お財布ケータイ」といわれる決済系サービスや、GPSという、どこにいるかを確認しながらいつでも必要な情報をとるサービスも行われ、携帯電話のインターネット利用は急速に進んでいます。

そして私共が、現在取り組んでいるのが、携帯電話を使って家のなかにある機器の操作をする、ということです。たとえば、不在のときに訪問者が来てもインターホンに携帯電話で応対ができるといったホームセキュリティとか、携帯電話で外出先からビデオ録画予約ができるとか。さまざまな生活シ−ンで、必要なときに必要な形でネットワークをつなぐための技術開発を行っています。

こういったビジネスは世界市場におけるシェアを意識しなければならないと考えます。その点で、中国市場は見過ごせません。現在、携帯電話の利用は4億人くらいで、中国市場で成功した会社が世界市場で成功を収めています。ソフトウェアやソリューション・サービスの分野では、相互の輸出入や相互連携がそれほど進んでいるわけではないのですが、携帯電話の端末では、中国におけるそうした傾向は顕著にあらわれているようです。たとえば、韓国のサムソンのように。ですから、私共は中国でしっかりと足がかりを作っていこうと、3年ほど前に中国に子会社を作りました。

中国支社では、ソリューションやビジネスモデルを展開しています。コアの研究・開発は日本で行いながら、大きなシステムやアプリケーションを実現する部分で、開発力、労働力の豊富な中国市場でのリソースを連携させています。今、私共は、チャイナモバイルという中国の最大手の通信会社と提携し、携帯電話を使った広告や、マーケティングを中国市場に展開しているところです。 実際に中国の市場がなぜ重要かをデータでまとめましたが、携帯電話はとくに顕著です。4億2千万人の人が使っているわけですから。4億2千万というのは、アメリカの人口の約1.5倍。それでも普及率は20%。まだまだ伸びる可能性を秘めているわけです。中国の方々がどれだけ喜んで使ってくれるものを提供できるかが重要です。それで、経営については中国の人と一緒に、というよりむしろ中国の方にリードしてもらって現地化を進めております。

ホームセキュリティやAV家電などを携帯で操作するという分野については、中国はまだ市場の環境が整っていないので、まずは日本で先行的な事例を作っていこうとしております。そこから中国へ拡げていきたいと考えています。一方で、中国で今進めているのが携帯電話を使った広告とショッピングサイト。これも日本で成功した事例を中国に持ち込んだ形です。こういったものが受け入れられれば、日中が融合したビジネスモデルが実現できるのではないか、と期待しているところです。

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■韓国 宋恵子 氏
(KoreaVenture Business Women`s Association )(事務局責任編集)
『U(ユビキタス)時代に女性起業が新たなビジネスチャンスをつかむために 』

私は女性企業の協会の会長を務めながら、IT企業のCEOも務めております。韓国の女性企業の協会は、IT、バイオテクノロジー、文化コンテンツ、知識産業サービスを行っている技術革新型企業の女性のCEOが集まって作ったもので、現在320の企業が加入しています。

ベンチャービジネスの女性CEOに販路を作ったり、助け合って企業の成長のために活動したり、制度改正を行うための働きかけをするなど、女性企業のインフラを改善する役割を担っているといってもよいかもしれません。60年代に経済発展が始まった韓国でも、男性主体の企業が発展の中心になってきました。そこで女性が闘うのは難しいことです。ではどうすればよいのか。その答えは女性が起業して、新しいビジネスを始めることです。

現代革命の技術を担ってきた旗手は、日本でいえばウォークマンを開発したソニー。ソフトウェアではマイクロソフト。インターネットの時になって、ヤフーやグーグルといった新たな革命を起こす企業もあらわれました。インターネット革命を考えると世界最高のインターネット書店、アマゾン。eBayというオークションサイト。韓国ではオクションという韓国で最初にインターネットオークションに着手した会社のサイトへの1日のアクセス数は137万件。そして最初に作られたゲームポータルサイト、ハンゲームという会社は1900万人の加入者を抱えています。またYes24という書店は50万冊の蔵書と15万の書評を持っています。企業の価値にも大きなパラダイムの変化があります。マイクロソフトは、その価値は700億ドルといわれていますが、マーケットバリューは2900億ドルともいわれます。無形の財産のほうが現物よりも価値が高いということなのです。この無形資産の価値をどう育てていくかが、今後の重要なポイントであり、韓中日が企業をどのように成長させていくかということにおいても重要な部分だと思います。

そこで、将来の「スター企業」というものがどういうものか考えてみました。私はやはりU時代、U-Businessに関連する企業ではないかと考えます。このユビキタスという単語のルーツは、ラテン語で「ubique(ユビーク)」。「いつ、どこでもつながる」という意味です。たとえば車の中でメールが打てたり、公園で大学の講義を受けることができたり、会社で仕事をしながら子どもが家でどうしているかを見ることができたり。それには新しいテクノロジーが必要ですが、どういったものか、みてみたいと思います。

まず、ネットワークテクノロジー。新しい大容量のサービスにするためにはインターネットのインフラが高度に発展していなければなりません。それからFTTH。光ケーブルは日本ではすでに500万以上の加入者がいるといわれています。ソフトウェアについても2.0セキュリティソリューションや知能型のユーザーインターフェイスが開発されています。新しい端末としてはスマートフォン、ホームネットワーク、ネットワークゲーム、ウェアラブルコンピュータが開発され、サービスが付加されていくわけです。

韓国では特許庁、関税庁で在宅勤務を行っています。オンラインで受け付け、U-Government、U-電子政府を進めていますし、すでに世界の都市ではU-Cityもつくり出しています。事務所のないU-環境。IBMは事務所に紙が1枚もありませんし、席も決まっていない。Note PCを持っていれば、どこででも仕事ができる。こうしたユビキタスにのっとった仕事をU-Workというわけです。サイバー学校、あるいはオンライン学校、U-Work、U-教育というのもインターネットを通じてできるようになります。

企業はどうすれば効率があげられるか、競争率が上げられるかを考えるわけですが、U-Workはユビキタスが花咲かせる領域です。U-Workは障害者やシルバー人材にもチャンスを与えます。女性に対する雇用の機会も増えます。出張しなくてもコミュニケーションがとれ、企業の競争力を高めることが可能になります。フリーランスなど、労働の柔軟性、非正規職の活性化がITインフラを利用してよい方向に発展していくのではないかと考えています。

企業が競争力を持つためには、日本がマーケティングをし、韓国でR&T、設計をして製造するといった分業の時代となっています。そのためにはU-Work、あるいはU-Officeが必要になってくるわけです。地峡温暖化やテロなどのことを考えても、U-Work環境を作らなければ企業の競争力は大いに削がれることになります。

もし、あなたが仕事を愛しているならば、どこにいるかということは重要ではありません。オフィスにいても、飛行場でフライトを待っているときも、あるいは大好きなカフェに座っているときも、いつでも仕事に没頭することができます。

想像してみてください。あなたがたとえどこにいても、その場所がまさにあなたの仕事場になるのです。恋人と2人でいても、あるいは家族と一緒にいるときでも、すべてのものがあなたとつながり、あなた自身もすべてのものにつながっているのです。あなたは、あなたの仕事をするだけでよいのです。

仕事がうまくいかないときでも、また自暴自棄になっているときでも、あなたがあの人と別れても、あるいはあの人があなたのもとを去っていっても、どうか悲しまないでください。なぜなら、あなたはそれでも誰かとつながっているのですから。外出をしていても、深夜道を歩いているときも、あるいは友が必要なときも、どうか忘れないでください。あなたはつながっているのです。あなたはどこへでも行くことができるし、彼女の微笑みをそばに置いておくこともできる。この自由は天国です。愛でもあります。

U-時代においては、我々みんながつながっている。ですから、韓中日の「輪」は見えなくても、ユビキタスの世のなかでは、時間や場所に縛られることなく、積極的に交流をしていくことができるのではないかと思います。

最後に1つ提言です。U-Forumnが誕生しなければならないということ。中日韓の3カ国が新たなIT市場、マーケットに挑戦するのは大きな意味があると思います。そのためにも、こういったフォーラムが継続できれば、と思います。Uの時代は、ITだけのものではありません。非常に多くの産業、そのパラダイムを大きく変えていくと思いますし、これを通じてグーグルといった、次世代のスターが女性企業の中から誕生することを願っています。

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■日本(モデレーター)杉田定大 氏(内閣官房知的財産戦略推進事務局 内閣参事官)

最後にビデオをご覧いただきたいと思っています。これは、携帯電話を使ってどういうビジネスを展開している「TOKYO GIRL'S COLLECTION」というファッションショーのビデオで、1ヵ月ほど前にNHKでも報道されました。

ファッションショーというのは、基本的にいわゆる専門家同士のやりとりですが、これはB to Cですね。コンシューマーにダイレクにアクセスするファッションショーです。東京の体育館に2万人も男女が集まって、女性が2次元バーコードの携帯電話を使って買い物をします。携帯電話で買いたいドレスの確認ができるシステムです。この日1日でだいたい2千万円の売上げがあったということです。

じつは近いうちにソウルでも日本の企業が展開しようとしているところです。中国における企画も進行中ということです。このような新しいビジネスは、やはりモバイルの世界から動き出す、ということで注目しています。

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