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Women's Global Economy Conference 日中韓女性経済会議
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06年開催講演録他
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第2部 ディスカッション
テーマ1<経済(金融)>
『日中日韓の経済交流の新たな可能性』

●中国:李 佩王 氏(中国経営報 総編集長)
●韓国:全 聖喆 氏((IGM)Institute of Global Management 理事長・國際辯護士
●モデレーター:木下俊彦 氏(早稲田大学 国際教養学部教授)


■中国 李 佩王 氏(中国経営報 総編集長)(事務局責任編集)
『中国経済の特徴と今後の発展について』

「中国経営報」は21年ほど前、当時の五千人民元、米ドルでわずか500ドルで創業された民間企業です。この21年で2種類の新聞と3種類の雑誌、そして2つのインターネットサイトを持つまでになりました。中国の改革、解放、発展とともに成長してきたこの新聞社に私は1986年から勤務し、記者、編集者を経て編集長になりました。本日は中国の経済を見つめてきた記者としての経験からお話をしたいと思います。

1970年代からの約20年間で中国経済は大きな変化を遂げ、素晴らしい経済業績をあげました。

その変化は、たとえば次のようなところにあらわれています。

1.「計画経済」⇒「市場経済」への転換=経済改革
中国における経済改革の根本は、計画経済から社会市場主義経済への転換を実現したことにあります。多くの経済学者は当初、経済改革を行うことを疑問視していましたが、結果的には経済学の常識では考えられないほど素晴らしい奇跡を築きあげ、中国経済は市場経済へ到達しました。

2.「不足経済」⇒「過剰経済」への転換 例)生活用品:配給⇒市場
計画経済から市場経済への転換は、不足経済の終結を告げました。市場経済の転換がもっとも顕著にあらわれているのは過剰生産が常態化したということです。20年前は生活必需品のすべてが配給品でした。今では生活必需品が一般市場にあふれています。

3.「閉鎖経済」⇒「開放経済」への転換
1980年代から世界経済はグローバル化へ、中国は閉鎖型経済から開放型経済へと進みました。経済運営の基本ルールは経済システムとリンクすることであり、世界市場経済とリンクすることです。中国はGATT復帰とWTO加盟(2001年12月)によって国際分業と国際協力に積極的に加わることになりました。中国もいよいよこれからはグローバル化を迎えることになります。

4.地域的な枠組み
改革解放以降、中国の産業の発展は2つの格差を生みました。1つは東部地域の中国経済産業「経済特区」と先進国の競争力の格差。2つめは東部地域と西部地域との産業競争力の格差です。中国がさらなる国際競争力を身につけるためには、東部地域の産業を発展させる必要があります。しかし地域のバランスを保つという原則に従えば、西部地域に資金を投入し、西部と東部の格差を縮小していく必要があります。西部地域の発展は今後の中国経済の発展にとっては欠かせないことなのです。中国は今、歴史的転換期に立っています。しかしながらこれからは世界に新しい活力を与える国となっていくことでしょう。


■韓国 全 聖喆 氏
((IGM)Institute of Global Management 理事長・國際辯護士)
(事務局責任編集)
『韓国の立場から見た 日中韓の経済交流の現状と展望』

本日は、韓中日の女性団体の発展のために、3カ国の女性団体がどのような共通の目標を持つべきか、申し上げたいと思います。
 現代はグローバル化の時代です。経済はインプットとアウトプット。どんなに素晴らしい品物やサービスを生み出したとしても、大事なことはどれだけ多くの人に買ってもらえるか。そのためには、さまざまなソースがなければならないし、販売市場が広がっていなければなりません。

マルコ・ポーロの時代から、グローバル化によって人々の生活は豊かになりました。人類が金持ちになりたいという欲望を持っている限りグローバル化は続くのです。

しかしながら、簡単にグローバル化が進んできたわけではありません。19世紀にはアメリカの貿易保護で、一時は共産主義によって障害がもたらされました。現在も多くの障害は横たわっていますし、今後も大きな挫折や隘路があるでしょう。そこでグローバル化の過程で起こっているのが経済の地域化、ブロック化です。代表的な例がヨーロッパ25の国が1つの市場となったEU、そしてアメリカ合衆国、カナダ、メキシコのNAFTAです。

ブロック化は小国にとって大きな特典があります。経済共同体を組んだEUはGDPが13兆ドルとなり、アメリカを超えました。そのおかげでドイツ、フランス、ギリシャ、スペインなどがアメリカと堂々と交渉し、市場を拡大しています。これに対してアメリカがカナダ、メキシコを取り込んでつくったのがNAFTAです。その結果、メキシコの外国人投資は10年間で400%成長し、輸出は240%、国民所得は3500ドルから6500ドルに増加しました。メキシコの成長をみて、中南米でも中南米自由貿易協定(CAFTA)を推進しています。

では、私たち韓中日はどうすればよいか。3カ国あわせた経済規模は7兆ドル超。NAFTAの50%に迫っています。10年後にはNAFTAを超える可能性も高いのです。日本の無限の技術力、中国の無限の労働力や資源、そして韓国人の精神力が1つになれば、最高レベルの製品とサービスを生み出すことができるはずです。なにより世界に類のない15億という消費者を抱えています。

とはいえ、経済的な背景も文化も、すべての面で違いがある国々がブロック化を実現するのは簡単ではありません。EUはそれを克服するために、新たな基準を設けました。よくグローバルスタンダードと表現されますが、これは世界共通で受け入れることのできる価値体系のこと。文化や考え方が異なっても合理性、実用性、生産性といった価値観は共通です。人類が幸福を追求するための価値、それがグローバルスタンダードなのです。

この大会で経済ブロックを構築する目標が持てるのなら、グローバルスタンダードという価値体系を中心に考え、努力していけばよいと思います。北東アジアの経済協力体制構築という目標をつくり、力が発揮できれば、世界的にも素晴らしい活動ができるのではないかと思います。

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■日本(モデレーター)木下俊彦 氏 (早稲田大学 国際教養学部教授)
『東アジアの経済交流における日中韓のポジショニング』

私は、現在、経済交流がどうなっているのか、そして今後の展望はどのようなものか、そのなかで日本のすべきこと、あり方などを述べさせていただきたいと思います。

東アジアでの地域協力が強く求められるようになったのは90年代後半以降です。そして今、ようやく東アジア経済共同体を、終局的には東アジア共同体をつくろう、という段階にきました。その最も大きい理由はアジアの通貨危機の発生(1997−1998)でした。アジアが手を結べば困難を克服できる、結ばなければまたやられる、ということがわかったのは通貨危機の大きな収穫ではなかったかと思います。EUやNAFTAをみても、またWTOを補完する意味でも、アジアが1つにまとまる必要がでてきたのです。

すでに東アジア13カ国にインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた地域で経済統合が進んでおり、域内貿易依存度は54%とNFTAを超えています。特別なことを行ったからではなく、デファクトな経済統合、つまり自然な企業活動の結果です。日中韓3ヵ国のGDPは東アジアの9割強。ASEANを大事にしながら、日中韓が手を結べば、東アジア全体もうまく動くことを認識する必要があります。

東アジア共同体のためには関税障壁の除去、投資ルールの共通化、基準認証の共通化、知的所有権(IPR)保護、人的交流などを進めることが必要です。現在の段階でアジア通貨を1つにすることはできませんが、計算単位をつくる方向で検討することでは財務大臣会合の合意ができています。

日本はASEAN主要国と1国ずつFTAあるいはEPA(経済連携協定)を進めてきました。今後ASEAN全体とのEPAを作る必要があります。さらに、FTAに加えて投資ルールを共通化することが重要です。知的財産をしっかり守る、人的交流を進める、教育面でも協力をするといったことを含めたEPAを進めております。日本の経済連携協定の基本方針は、WTOを中心にしつつ、それを補完するために自由貿易地域をつくる、というところにあります。アジアは貿易立国ですから、ほかの地域とも取り引きをしなければならない。そしてFTAを補強するためにEPAを拡げる必要があります。将来の展望としては東アジア共同体もあります。日本は先進国として高水準のEPAをつくっていかなければならない。域内諸国間の格差が広がらないように、相手国の投資環境の改善を図り、障壁を除いて、相手国の国際競争力をつけることも必要です。しかしながら民主主義国家ですから、何事も国民の合意を得る時間と理屈が必要です。

日本政府はタイ、マレーシア、フィリピンなどEPA構想を進めてきましたが、今後は中国、韓国を加え、ASEAN全体とその構想をすすめ、東アジア全体のEPA構想もすすめていかなければならない。東アジア経済共同体のためには日中韓の協力は不可欠です。「国」と「国」の関係を支えていくのは「民」と「民」、そして「地方」と「地方」です。

付け加えるならば、日中韓の協力のカギは環境と省エネ。中国の発展は素晴らしいのですが、環境が悪化し、エネルギーが大量に消費されていくのは、中国国民だけではなく韓国や日本、ひいては世界的にも問題が生じます。一時期、公害大国といわれた日本が、それを克服してきた経験をいかし、優れた技術をもって中国などへの協力体制を確立することができれば、日中韓の関係はよりゆるぎないものとなっていくはずです。

結論としては、困難(難)を知って然れども進む、ということになります。北東アジアは歴史的にもさまざまな問題が残っています。だからといって放っておけばいいということではありません。

以上、三者三様の見解を述べさせていただきました。残された課題も多く、決して簡単な問題ではありませんが、克服するための忍耐力を持ち、日中韓が協力して共通認識を確認していくことが大切なのだと思います。

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