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Women's Global Economy Conference 日中韓女性経済会議
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基調講演

■『女性経営者をとりまく3国のビジネス環境』/坂東真理子(実行委員長)

今日お集まりになった皆さまに、この会議の実行委員長として心から御礼申し上げます。日本で、中国で、韓国で女性たちが活躍をしている背景には、アジアの大きな勃興がある、アジア経済全体が力を回復しつつあるということを強調したいと思います。
21世紀はアジアの世紀と言われますが、中国の目覚しい経済的成長に注目が集まっています。同時に、中国の発展の中で、いくつかの問題が起こり、それはアジア、あるいは世界にも影響を与えています。まずひとつは、中国の経済成長によって原材料の需要が増え、価格が高騰しています。ふたつ目は環境の問題です。中国内陸部での砂漠化、水不足、自然災害、大気汚染といった環境の悪化は、中国一国だけの問題ではなく、日本も含めて私たちが一緒に協力していかなければならない大きな課題です。また、中国の農業、国有企業の改革は、まだ進めなければいけませんし、国内での格差の大きさが社会的な不安定を招くことがないように、十分に対処してもらわなければならないと思います。法律やルールを明確にし、企業の社会的なインフラを整備していくということも大事だろうと思います。また人民元のコントロールは世界経済に対する撹乱要因として皆注目されていますが、バブルとバブルの後の経済低迷を長引かせた日本の経験が、中国の為替をコントロールする上では、大きな参考になるのではないかと思います。

中国に先立って、韓国も経済的には大きな成功を収めました。1950年の朝鮮戦争、97年の金融危機を乗り越えて、韓国は今確固とした経済強国としての立場を固めつつあります。60年代、70年代の韓国の成功はASEANのテイクオフにも大きな役割を果たしたと思います。ソウルオリンピックの成功はその中の大きなシンボルであり、さらに2002年のワールドカップ日本共催の成功も、新たなアジアの協力の姿を示していると思います。

このように、日本が50年代から、韓国が60年代から、中国が70年代の終わりから経済的な大きな成功を収めて、アジアの力が高まってきたところに、今、インドが加わろうとしています。19世紀の後半から20世紀の前半、大変苦しんだアジアが大きく蘇りつつあります。蘇ったアジアがどのような方向を目指すのか、きちんと協力をしていくことができるのか、相変わらず喧嘩をしていくのかによって、アジア全体の力は大きく変わっていくと思います。中でも特に注目されるのは、都市部の中間階層が厚くなってきているということで、そこには新しい共通の文化が生まれつつあります。同じような価値観を持ち、洗練された好みを持つ、アジアの中間層をどのように育てていくのか、女性たち一人一人の人権を認め、能力を発揮できるよう環境を整えているかが、ソフトパワーを高め、強める上でも、大きな意味があるのではないかと思います。

昨年の6月、北京で、日本と中国とそしてアメリカの女性企業家の方たちが話しをする機会を持ち、それが今日の会議につながったわけですが、5月にはグローバル・ウィメンズ・サミットがソウルで開催されました。そこで発表されたマッキンゼーレポートによれば、今後のアジアの労働力の減少が見込まれ、男性の労働力は既に飽和し、十分に活用されつくしている中で、女性だけが、これから活用すべき資源である。アジアのさまざまな問題を解決するためには、経済成長が不可欠であり、それを支える人材として女性の存在は不可欠である、ということです。マクロで、労働力として各国経済が女性を必要としているだけではなく、ミクロで、各企業にとっても女性を活用するメリットは大きい。最善のタレントをあらゆる人材プールからリクルートしなければならない。半分以上が女性である顧客の満足度を最大化するためには、女性の能力の発揮が不可欠である。今までと異なる新しい発想、新しいアイディアを持ち込んで、改革をアクセレートするのも女性である、と言っています。

中国においては、経営者、管理職、人民代表部の議員の約20%が女性で、いろいろな分野で女性たちが活躍をしています。また、韓国政府は女性の登用に大変真剣に取り組んでいます。例えば全国区の選挙の候補者の3割は女性でなければいけないという、クォーター制をしいています。また、韓国女性開発院がいろいろな政策を強力に進めています。 日本は、私がおりました内閣府男女共同参画局では、男女共同参画社会基本法を背景に、2020年までには、あらゆる分野で女性を30%にしようというチャレンジ支援を打ち出しています。しかし日本は法律や制度は大変整っていますが、強制力がないことが、女性たちが、まだ十分には能力を発揮していない、ひとつの理由になっているという気がいたします。
いずれにしても、女性たちが能力を発揮すると同時に、家庭、家族とのバランスをとって働くことができるような社会をつくるためには、各国が本腰を入れて、取り組まなければならないと思います。女性だけでなく、男性も含めて、仕事をもち、経済的に活躍をしながら、家族がもてるような社会の環境をつくっていく必要はこれからも、ますます大きくなっているだろうと思っています。

それでは、これからのアジアの発展と女性のあり方について、何が必要か、もう一度まとめてみたいと思います。1995年の北京会議、第4回世界女性会議で採択された北京綱領の成果を活かし、日本、韓国、中国でも、いろいろな課題に取り組んでいますが、この3カ国で共通して取り組まなければいけないのは、女性たちに対する教育です。 まず、女性たちがスキルを持つだけの経済人ではなく、十分な教養をもつ人間として成長しなければなりません。そのためにも、アジアの国々の間で留学生を交換する、研究で協力をする、技術で企業が協力をする、いろいろな形での協力を推し進めることが必要だと思います。ご在席のみなさまこんにちは。「日中韓女性経済会議」開催に際し心よりお祝いを申し上げます。

2つめは、保育、介護といった弱い立場にある人たちをサポートする体制を整備することです。女性たちが自分の家族だけではなく、社会の家族のために活動をするということを期待しています。
さらに、特に東アジアにおいては、文化産業の振興が大変期待されますが、重要なのは良いものを見分ける力を持つ「目利き」がいることです。女性たちが感性を研ぎ澄ます、美的なセンスを研ぎ澄ますということが、大変重要だと思いますし、また自分自身がクリエーターになる、プレーヤーになるということにもつながっていくと思います。

女性たちは今まで活用されない資源でした。しかし、そのために私たちは過去のしがらみ、過去の過ちにとらわれていません。新しいアジアの、新しい担い手として、私たち女性たちがぜひ協力して、平和なアジア、繁栄したアジアを一緒につくりたいと思っています。今日ここにお集まりになった皆さんと、ぜひその第一歩を踏み出したいと思っています。 どうもありがとうございました。

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