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06年開催講演録他
05年開催講演録他
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第3分科会

■寺脇 研氏

実は、ちょっと考えさせられることがありました。韓国に、アジアで最も権威があるといわれている釜山国際映画祭という映画祭がある。この釜山国際映画祭で、今年10周年を記念して、アジア映画アカデミーを開くことになり、アジア人の映画を志す若者は誰でも応募ができ、審査を通過した30人弱の若者たちに、韓国、中国、アジアの世界的監督たちが指導をして、最後はそれぞれ1本の映画を撮らせようという催しです。

その実行委員会から、応募が今どんどん来ているが、日本人からの応募が全然ないと言われて、これはよくないと、今、一生懸命日本の若者に行かないかって言っています。

一番のネックは、すべての講座が英語で行われるため、映画をやりたい人はいるが、英語ができるのがいない。だから、英語教育はいろんなところで大事だとは思うが、文化の面でも、これから日中韓、アジアで交流しようとすると、もう少し日本の芸術家の卵たちの語学問題を考えなければいけない。

また、アジアの言葉、中国語は多くの大学で、今、第2外国語として取り扱われているが、芸術家を志す若者に、これからは中国語や韓国語が大事だよと言うが、韓国語は、学びにくい。国立大学ではすべての大学で第3外国語の扱いで、学生が韓国語を大学で学ぶには、英語を学んで、第2外国語を学んで、そして韓国語を学ぶということしかできない。これは、今、文化庁から各大学に、ぜひ韓国語を第2外国語に位置付けてくれないかとお願いしています。

韓国、中国との文化交流はどんどん進んでおり、5年前には考えられなかったことが、どんどん起こっています。わずか5年の間に、日本と中国、日本と韓国の関係が非常に深いものになっている。それは文化の面で、やはり顕著なんじゃないかと思う。確かに、政治の面での日中の関係、日韓の関係というのは、非常によくない状態にあるが、国民の間に深刻な動揺が広がっていかないというのは、やはり文化で韓国と交流し、中国と交流していく中で、韓国人や中国人の生き方、考え方が日本にも伝わってきているということが、何より大きい。それが証拠に、全然、今、文化交流がほとんどできない状態にある北朝鮮との間では、どうもあの人たちは何考えているか分からない、何をしでかすか分からないという不安感というものがある。やはり、文化を通じて関係をつくっていくことが重要だと改めて感じています。

午前中に、私どもの文化庁河合長官がお話をして話すことはないのですが、今改正の議論が行われている憲法から教育基本法を改めて読むと、戦後間もないころ、私たちの先輩は文化で新しい国をつくろうと、文化国家にしていくと高らかにうたい上げている。文化を通じて世界と仲良くなっていこうという気持ちが、憲法や教育基本法の中にはありありと示されている。残念ながら、そのことを少し忘れていたと思う時期が過去にはあったが、今日では、その言葉の理想、日本を文化国家にしようという言葉の意味が本当の意味で問い直され、そして、それを大事だとみんなが認識し始めていると思う。長官からも幾つか紹介されたが、私どもも韓国、中国を非常に重要な隣人として、文化交流に一番力を入れなければいけないと考えている。2002年の日中国交正常化30周年、また今年は、2005年日韓国交正常化40周年、日韓友情年と、積極的に交流事業を進めているが、この交流事業も、またさらに一歩踏み込んだ事業がどんどんできるようになっています。今年の日韓友情年のスローガンは、「進もう未来へ、一緒に世界へ」というもので、お互い交流するだけではなく、一緒に何かをつくっていこうという段階にだんだん入ってきていると思っています。
昨日は、さらにそれを一歩深めて、韓国のパンソリと沖縄の八重山地方の民族芸能と、それから奄美大島の島唄と三つがコラボレーションする音楽会を那覇で開くことができました。さらに、日韓交流の新しいページだというのは、日本の文化とは、決して単一ではなくて、本土の文化以外にも、奄美から琉球諸島へかけての南西諸島の文化という文化があると考えている。つまり、交流しなければいけない、そもそもの、その国の文化の多様性も示していける段階に来ていると思っている。

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■蒋 暁松氏

私は、日中韓の国の関係は、ほんとに今までないほど微妙な時期に入っています。その時期にいる私たちは、どういうことをすれば少しでも緩和できるか。観光と文化の二つも、すごく大事な分岐点かなというふうに思っている。

この会場に、今100人以上の日本人、中国人、韓国人がいるが、顔だけ、服装だけを見れば一緒に見える。実際には、国と国の間には本当に違うことがある。例えば、我々パネリスト4人、名前も同じ漢字を使う者同士が隣同士に座っていて、その名前を正しく発音して読んでもらえないことは、三国の課題ですよ。むしろ欧米の方々は我々の名前を正しく読んでくれる。同じ漢字を使っていて、お互いの名前さえ正しく発音できないこと、私はまずこの違い、課題があるということを認識した上で、この3カ国は離婚しよう、引っ越そうと思ってもできないことも分かっていただきたい。

だから、どういう付き合い方をすれば、お互いにとって少しでもプラスになるかなということを今こそ、考えることが必要だと思う。隣の隣に藤田さんがいるが、国土交通省は、すごく大きな役割を果たしていると思う。

7月から中国の一般の観光客が日本に来るためのビザをオープンした。人と人の交流、観光の力は大きいと思っている。マイナス思考に考えてもどうしようもない。

プラス思考で、しかも一人一人が行動に移してやっていかなければならないと思っています。
ちょうど今日出席されている日本中華ソウショウ会会長のガン会長から、一つの依頼があった。第9回華人大会が、再来年日本で開催することになった。1991年からシンガポールのリ・コンユウさんが大将で、2年ごとに一つの国で、世界の華人を集めて大会をやっている。今年は8回目で、韓国でやることになっている。世界の華人、大陸の中国人だけじゃなくて、台湾の華僑とか、韓国の華僑とか、アメリカの華僑とか、シンガポールの華僑の一番優秀な方々などを、一堂に集めて開催する。昨日韓国女性経済人協会の名誉会長申さんとお会いしたが、韓国は近いが、私は1回も韓国にお邪魔したことがない。私は2年後に日中関係かいいかどうか、悪くても、良くても、絶対的にこれを大事にしていきたいと思っています。いま世界の中国人の勢いがすごい。世界の5人中1人は中国人だが、どうやってそれを皆さんがプラスにできるか。もっと中国人に日本に来て分かってもらうことと、また、中国人も、日本で自己紹介がうまくできればいい。そういう意味では、観光と文化は、とてもとても大きな力を果たしていると思う。

第9回華人大会開催にあたって、今考えていることは1カ所だけじゃなくて、関西全体でやろうと思っている。しかも1週間かけてやろうと。再来年のことだけども、時間をかけて、博覧会みたいに、オリンピックみたいに、ちゃんとスポンサーも立ててもらい、国も応援してやっていこうかなと思っている。で、そのとき、大陸と台湾の関係も少しよくしようと思っています。私たちが考えていることは、台湾の故宮と北京の故宮、そのときは両方とも、ここに持ってくる考えがある。それぞれにとってプラスになれることは何だろうと、我々がやれることを、力いっぱいやろうと。これから、私のテーマの一つでもあり、頑張って日中韓の間がもっとアジア人にとって誇りになることは、していきたいと思っている。

また、日本の受け入れ態勢も、若干心配しています。例えば、大勢中国のお客さんがやってきたら、受け入れ態勢は大丈夫なのか。通訳ですね。中国人で日本語を話せる人はものすごく多い。だから、ちゃんとできているかどうか。また、私の友達で、在日中国人は、日本でも旅行社をやっている。在日中国人の力もうまく借りて、いろいろクリアできれば、日中関係は絶対よくなると期待しているし、自分でも頑張っていきたいと思っています。

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■藤田礼子氏

国土交通省国際観光推進課の観光渉外官をしている藤田礼子です。  
今日は、私のほうから、ポイントを三つお話ししたいと思っています。 一つは、今取り組んでいるビジットジャパンキャンペーンというのは何なのかということと、それから、その中で、私が実際に手掛けさせていただいた集中キャンペーンで,「ようこそジャパンウィークス」を具体的な事例としてご紹介させていただきたい。それから、三つ目は最近の日韓、日中関係に対してどんな取り組みを観光部門としてやっているかと、その三つについてお話します。

まず、会場の皆さまで、ビジットジャパンキャンペーンを知っている、聞いたことがあるという方、ちょっと手を挙げてみていただけますか。非常に多いですね。多分6割強ぐらいの方の手が挙がったと思う。ビジットジャパンキャンペーンは、2003年から始まり、2010年までに外国人旅行者を倍増して1,000万人にしようとするものです。

なぜ今、観光立国ということを言い始め、特に海外から日本に来てもらうというインバウンド政策をやるのか?まず、観光というのは、非常にすそ野の広い産業であること。旅行業だけではなく、交通機関も関係し、宿泊、ホテル、そのほかにもレストラン、お土産ショップがあり、さらにお土産ものを作っている製造業というように、非常にすそ野が広い。

その経済波及効果が54兆円、国内生産額の6%といわれ、大きな産業であり、また労働集約的な部分もあり、雇用創出効果が442万人、総雇用の7%と、そういう意味で、観光は21世紀のリーディング産業として、注目していくべき産業であると、観光立国が始まった。また、観光というのは、地域の活性化、日本全国の活性化にもつながるという意味でも、国内全体に波及するとして意義があるものと思っています。

経済的な面が、一つ大きなポイントで、もう一つは国際相互理解の増進を図る上で、非常に重要なものであると。日本を、実際に来て見て、知って、それで日本を好きになっていただく。それが非常に大事ではないかと思っています。

キャンペーンをやる上で、国として予算を付けて、海外に対して日本をPRしたり、あるいは海外から日本に来てもらうために、いろんなツアーの造成をやったりということをしています。限られた予算の中で、重点市場を置き、たくさん日本に来ている国々に対して、より大きくPRするのが効果的だということで、現在12カ国を対象としている。

その中でも、特に重要な国というのは韓国と中国である。日本に来ている外国人中で、26%が韓国の方です。非常に大きい。それから、中国の本土からの方が全体の10%、さらに香港5%、台湾18%、そういう意味で中華圏は33%の方である。韓国から四分の一、中華圏から三分の一、その他アジアを含めて69%で、非常にアジアと日本のつながりが大きいことが分かると思う。

具体的な事業として、三つ柱があります。一つは海外への日本の魅力のPR。例えば、小泉首相が、自らビジットジャパンキャンペーンのPRビデオに出演して、訪日、日本に来てくださいと呼び掛けて、CMを航空機内で放映したり、海外の旅行博で放映したり、海外の新聞に日本の観光魅力を伝えるような広告を行ったり、海外のメディアの方々に日本に来ていただいて、日本の幅広い魅力、四季折々の美しさや、日本の世界遺産、美しい自然、文化など多様な魅力を実際に見てもらい、新聞、雑誌に書いてもらう。

二つ目の柱は、訪日旅行商品、ツアー商品の造成を支援するということ。国によって日本に感じる魅力が違う。例えば、中国の方では、ゴールデンルートといわれている東京から伊豆箱根に行き、温泉に入り、富士山をみる。そこから京都に行き、大阪から帰るというルート。さらに秋葉原や大阪のでんでんタウンで、電気製品を中心としたショッピングを楽しまれる。欧米の方であれば、むしろ日本の伝統文化に興味があり京都、奈良、広島などを見たりと、国によって日本に対する興味の持ち方が違うため、相手の国の旅行会社の人に実際に見てもらい、その中で自分の国のテイストに合ったツアーを組んでいただくことも行っている。

それから、三つ目の柱としては、国内でのキャンペーンの周知ということである。国民の一人一人が、外国人の旅行者、外国人の方々をおもてなしの心でお迎えしましょうと、呼び掛けています。  

具体的に「ようこそジャパンウィークス」という集中キャンペーンを紹介します。これは、中国と韓国のお客さんを重点対象地域として行う集中キャンペーンなので、中国、韓国の方々が来やすい旧正月、春節の時期を狙って今年の2月に行ないました。どうやって魅力を打ち出していくか、とにかく楽しくて安くて便利な日本旅行という、その三つを打ち出していった。日本全国で、雪や明かりのイベント、地方のイベントに外国人の方がおいでになると、何らかの+αのおもてなしをやってもらえる。例えば、お酒の振る舞いがあり、中国語や韓国語の対応ができる人がご案内するとか、+αの取り組みを実施した。

その中でも、中国向けイベントは、中国の方の好きな富士山の麓にある富士急ハイランドで、中国人向けに完全に貸し切りにし、中華風のお正月の飾り付けや日本のもちつきとか、獅子舞とか、日本のお正月を楽しみながら一方で中国雑技の披露など日中のお正月を楽しんでいただきました。  

これは、中国政府も喜んでくださり、王毅駐日大使もイベントに参加され、CCTVも中国の大みそかの日に全国放送で流してくれた。これにより中国の皆さんが、日本が一生懸命おもてなしをしようとしているという雰囲気を感じていただいた。  

それから、韓国の方向けにも、サンリオピューロランドで、韓国で人気のキティちゃんにショーをやってもらったり、ハウステンボスで日本と韓国の太鼓の競演をやったりとか、いろんなおもてなしをした。中国の方、韓国の方、どうぞ日本に来てくださいという気持ちを、ぜひ感じていただけたらいいなと考えている。またイベントのときに、国宝や重要文化財の特別観覧をした。いらした外国人の方々に、まさに国の宝である国宝や、重要文化財など普段はなかなか見せることはできないものをお見せするとか、そういうおもてなしをさせていただいた。また、神社仏閣のご協力もあり、ここ京都では、下鴨神社で十二単の着付けを実演したり、王朝の舞という美しい舞を舞ったり、高台寺で抹茶の体験といったことも行った。  

キャンペーンが始める前の2002年では、日本から海外に行った人が1,652万人、海外から日本に来た人が524万人である。要は、日本から海外に行く人の三分の一ぐらいしか、日本には来ていない状態であった。そこから一生懸命キャンペーンをやって、初年度の2003年は、残念ながら前半はSARSの影響を非常に強く受けたが、後半伸ばしたことで、前年度とほとんど同等の521万人。しかし、その翌年は614万人で、初めて600万人を超えた。キャンペーンをやり始めた意味があった、効果があったというふうに考えています。  非常に調子が良くてうれしく思っていたところ、残念ながら、ご承知のとおり、日韓関係、日中関係、いろいろと難しい問題が生じてきました。特に3月の辺りから、竹島問題や靖国参拝問題、教科書問題、常任理事国の関係の問題だったりと、政治、外交上は、いろいろ難しい問題というのが出てきました。  

政治外交的には難しい時期ですが、だからこそ、逆に人と人との交流は、閉ざされてはいけない、途切れてはいけないと思っています。文化、観光を通じた草の根の交流は、難しい時期だからこそ、むしろ一生懸命やっていく必要があるのではないかと思っています。個々の交流の中で、人と人との信頼関係が、個々人のベースでたくさんつながれて、それが、国と国との関係も良好にしていくといいなと思っています。

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■鄭 在貞氏

現代社会は、人と物、お金、情報などが、国境を越え頻繁に行き来する、そのような時代です。いい民族、いい国家、また、いい文化同士の接触が非常に多くなり、相互理解が深まる面がある一方、ある面では、確執と対立が強まる傾向もあります。だから、世界の平和、世界の共栄ということを求めるには、いい民族、いい国家の間の文化交流、または相互理解ということが非常に重要だと思っています。  
それを上手にする方法としては、政府とか国家が前面に立つこともありますが、身近なところにいるいい民族、または外国人同士の付き合い、文化交流、相互理解ということが非常に大切だと私は思っている。これから私が試み、体験した三つの事例を紹介しながら、皆さんに私の考えを述べさせていただきたい。

まず一つは、ソウル市民大学での試みです。私はここに来る前、ソウル市立大学の付属機関であるソウル市民大学の学長、責任者として運営したことがある。ソウルの真ん中に立派な教室を持って、約2,500人のソウル市民が在学している。いわゆる生涯教育機関ですが、そこで私はソウル市民のための、また、ソウルに居住する外国人のための相互理解の教育みたいなことをやったことがある。

具体的にソウル市民のための異文化理解講座について申し上げます。異文化を理解するのには、まずは言葉が大事です。そこで、英語と日本語、中国語講座を設けて、初級から上級の課程を置き、非常に熱心に市民たちがそこで言葉を学んでいく。  
もう一つは、外国の歴史と文化を学ぶ講座を設けました。例えば、アメリカを正しく知る講座、日本を正しく知る講座、中国を正しく知る講座。なぜ、この正しくという名前を付けたかというと、普通我々はマスコミとか何かによって、外国についての先入観みたいなことを持って、少し偏った理解をする恐れがある。それを我々の大学の教授たちが、もっと公正に外国の歴史や文化を紹介する講座を設けたのです。

私が試みた2番目の講座として重要なものは、ソウルに住んでいる外国人が韓国を理解する講座です。それには、まず韓国語が重要です。韓国語も初級から上級まで、いろんな課程を設ける。韓国の文化と歴史を教える講座として、例えば、韓国の歴史と文化という講座。また、ソウルは1,000年ぐらいの間、都として反映したから、ソウルには歴史遺産がたくさんある。それを直接巡りながら勉強する。例えば、ソウルの名所巡見とか、そのような講座を設けた。非常に評判がよかったです。

3番目は、日本人のための講座を設けた。なぜ日本人かというと、文化庁の寺脇部長が言われた通り、韓国日本間にはいろんな出来事があって、相手についての理解が非常に不十分なこともある。それで、ソウルに居住する日本人のための、日本語でやる歴史の講座を私が直接実施した。例えば、日本人のための韓日関係史。韓日関係のゆかりをたどる、歴史を聞くみたいなことをやって、参加者を連れて現場で説明すると、日本人は普通勉強が好きだから非常に喜んでくれます。

ソウルには約1万人の日本人が住んでいます。商社マンとかいろんな人々の家族を含めて。そんな人々は、私が1年京都で勉強することになったことを知って、彼らが私のところに訪ねてきて京都を案内してくださいという。私は京都人でもないのに、私は京都の歴史と文化をソウルに住んでいる日本人に教える、そんなこともできるわけです。ソウル市民のための、外国人の外国の歴史文化の講座を聞いた人々は、中国と日本を直接に歴史探検に行く。先月、京都まで彼らが来てくれました。これこそがお互いの相互理解や文化の交流であると、私はそう思っています。

2番目は、「内なる国際化は何か」という、それを実現することが大事ということ。例として、普通のおばあさんの話をします。例えば、千葉にイトウミチコさんという85歳のおばあさんがおります。私とは、もう15年〜20年の付き合いで、小さな水道会社をやっている。おばあさんは、日本が敗戦したときに満州に住んでいた。だから、戦争がいかに惨めなことかよく知っていて、その後戻ってからは、世界が平和にお互いに共栄する、そのためには自分が何をするかと考え、やっぱり周りにいる留学生の面倒を見るといって、それをもう35年も続けています。

普通に私はお母さんと呼んでおり、お母さんの家にいると、ただ温かいご飯、みそ汁が、いつでも食べられる。だからそこには世界の国々20カ国以上の学生たちがいつも集まっている。小さな部屋に。汚いですよ、部屋も。そこで集まってご飯を食べながら、みそ汁を食べながら、お互いの文化や自分の勉強について話し合う、日本の生活を学ぶ、これこそが草の根の交流であり、「内なる国際化」だと思う。  
彼らは国に戻ると、国では重要な役割を担います。だから彼らとの付き合いは、その後もずっと続いていく。結婚するという招待状が来ると、その国まで行くし、彼らが日本に来ると、必ずお母さんのところに寄ってあいさつをする。そのようなことが続くということ、これこそが国際理解であり、文化交流であり、大げさにいうと世界の平和と共栄の道だと私は思っています。これが、2番目のことです。

3番目は、今年は京都にいるので祇園祭に出掛けてみた。びっくりしたのは、人々が多くて動けない。鉾とか山とか、理解できないこともいっぱいあったが、幸いなことは、今年、祇園祭1,200年の歴史の中で、初めて外国人だけで運ぶ鉾ができたこと。外国人が鉾を持つ。そんなことは、今まで考えられなかったのです。祭りは、ある意味では、その町内の人々同士の祭りで、他の人々はただの見物者だと僕は思ったが、そうではなく、外国人が参加することになった。これは大変なことで、外国人が規則を分かりながら、ある意味では日本の伝統文化に直接に参加する。それで、町の人々と同じことをやり遂げ、達成感を味わうという・・・。これこそが文化の理解であり、ある意味では相互理解の常套である。

それは、京都という特別な町であるから可能かもしれない。なぜならば、京都というところは非常に文化、伝統を重んじながらも、外国の文化を一生懸命、積極的に摂取して、自分のものにして、またつくり上げる、創造豊かな、そのような都市であるからだと、私は思う。いやこれは韓国と中国と日本、みんながこれから一生懸命やるべきだという考えを持った。

三つの事例を紹介したことは、全く私個人の試みと個人の体験によるものです。結びに代えて一言言うと、我々が国際交流、異文化の理解などと言うときには、ひょっとすると、大げさなこと、抽象的なことを言いがちだと思う。しかし、我々の周りには、身近なところには、外国人、いい民族がいっぱいいる。実際に。ある意味では国際化が進めば進むほど、外国人とか異民族と一緒に住まなければならない。そのような時代になる。東京とか京都は当たり前で、ソウルも何万人の外国人がいる。北京とか上海は言うまでもない。そうすると、結局、文化の国際交流とか相互理解ということは、身近なところから始まる、このようなことがいいのではないかと、私はそう思っています。

国際理解と文化交流の中で、身近なところに住んでいる外国人、異民族は宝物です。彼らを通じて、ある意味では、今日の話題の一つである観光産業を興すとか、文化的な国の力を増進するとか、なんでもできるようになる、そのようなことが大事だと。私はそれを「内なる国際化」という名前を付けて、皆さんに話したいと思ったのです。

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■加藤暁子氏

明後日から日本の次世代リーダー養成塾を開催します。これは、奥田経団連会長を塾長に、福岡と佐賀に、全国から高校生を160人集めて、彼らに日本のことを勉強してもらおうというものです。日本と近隣諸国の関係史みたいな視点をもって、右にも左にもぶれていない日本の歴史、文化を教える授業を必須にできたらと考えています。講師陣には最近まで国際文化研究センターの所長をされていた山折哲雄先生や川勝平太先生ほか、いろいろな先生方に来ていただきます。まさに、2週間合宿形式のなかで、びっちり高校生に日本の良さも悪さも、海外とのかかわり方も勉強してもらいたいというものです。これは九州電力をはじめとする九州財界の皆さんに協力していただいています。

この時期、教科書問題が出て、しかも反日の問題が出て、非常に私は寂しく思いました。一つは、中国や韓国の教科書に行き過ぎた、必要以上に日本は悪いことをしたと、エキセントリックになり過ぎている部分も確かにあると私は思う。もちろん悪いことは、きちんと過去を踏まえた上でこれから学んでいかなくてはいけませんが、逆に日本では、全く歴史を教えられていません。私の娘は今大学生ですが、ほとんど、なぜ今、反日のデモが起こったのかが実感として分からないという。

私は、親および学校の先生たちの責任が大きいと思っている。そのため民の立場できちんと理解向上をやっていきたい。来年はぜひ、この塾に韓国とか中国人の方々をお招きして、例えばこの日中韓の女性会議の高校生版みたいなものを、夏に開催をしたいなと考えています。

今、日本が何をしなければならないかというと、特に今回、観光交流が挙がっていますが、日本人は井の中の蛙というか、分かっていない部分もあり、ソフトの部分でまだまだ問題があるのではないかと思っています。日本人の良さに、ホスピタリティーがある。鄭先生のおみそ汁の話ではないですが、おばあちゃんの家庭的なホームステイなんていうのをやってみたらすごくいいと思う。かゆいところに手が届くというところがすごくある。情報として、なかなかまだ日本のことが、きちんと外国人に伝わっていない。

特に観光という面だけで一つ挙げてみても、例えば、私は最近、携帯電話で天気予報とか、グルナビでおいしいレストランの検索とかをよくやる。そういうのをぜひ英語でつくってみてはどうか。観光本も、地球の歩き方みたいなものを、海外向けに日本のものを英語、中国語、韓国語などさまざまな言語で出したらいいと思う。 たまたま私は20年新聞記者をして、最後6年ほどは香港の特派員をしていました。そのときにマハティール首相にインタビューをしたことをきっかけに、今親しくさせていただいていますが、例えば、マハティール首相が日本に来られたときに、私はご家族旅行のための旅館を探すとか、彼は日本の牛肉が好きなので、どこでおいしい牛肉が食べられるかとか、そういうのを必死になって探すのですね。多分そういう海外からいろんな方々が来られる時に、なかなか日本人で、そういうJTB役みたいなことをやる人間がいないわけです。来日観光客が、自分ひとりで本当においしいものを探そうと思うとやっぱり難しいのです。ですから、せっかく政府が立ち上がって、ビジットジャパンキャンペーンをやっているのであれば、やっぱり民間は、もっとかゆいところに手が届くような情報サービスをやるべきだと思う。

それと、もう一つ、そういう、例えば要人だとかと一緒に歩いていて、すごく気になることがある。おばあちゃんとか、おじいちゃんとかは、街で歩いたりして、「ああ、マハティールさんがいる」とか言って寄ってきて握手したりされるのですが、若い人は、まったく違う。例えばアジア人の方からその人に語りかけ、歩道を歩いていて、「こんにちは」なんて言っても、若い人は一切、目も合わさなければ、あいさつもしない。それで、マハティールさんは、茶髪、ピアスが日本を悪くしていると言われたのではないかと思う。今、自分自身が新聞記者を辞めて、こういう教育の分野にかかわるようになって、ほんとに思うのですが、若い人たちの教育というのは、すごく大事だと思います。

もっと身近なところで温泉の話をすると。中国も韓国もあったし、チェンマイをはじめ東南アジアにもいっぱいあるのですが、例えば温泉サミットをやってみてはどうか。それから、私たちは同じお米を共有しているので、朝ご飯はアジアの国に行くとお米を必ず食べられるということもある。お米文化みたいな文化交流だとか、さまざまなことができるなと思っている。

最初に申し上げたような高校生を集めてみて思うのですが、最近、何となくマニュアル人間化していて、受験勉強に偏ってしまって、自分から何かをやるようなことはできなくなってしまっている。ですから、昨年はこのリーダー塾で、子どもたちを連れてタイとマレーシアに行ってきた。イスラムというものが、アジアでは原理主義的ではなく、中国人や韓国人、インド人の人たちと一緒に仲良くやっている現状を見て、学校交流をやってみて、非常に大事だなと思った。

高校生だとか小学生だとか、そういうレベル、それから九州では、一生懸命やっていらっしゃる30代、40代のビジネスマンを対象にした、「九州アジア経営塾」みたいな形で、アジアとの関わり合いをビジネスマンとして、第一線にいる人たちが、頑張ってやっていこうとしておられる。民間の一つ一つが、反日がない世の中になる原動力になっていくのではないかと思う。

これは国益とか、愛国心とか、日本人は、日本人としていいところが何なのかを考え、日本人として、自分が誇りを持つことから始まる。誇りをもつことができなかったら、中国の文化も韓国の文化も大事にしたい気持ちにはならないと思う。私は、子どもたちにそれを教えていく、つまり日本人が、なぜ日本人として、これからどうアジアの人と関わっていかなくてはいけないのか、そういうことを親の立場や学校の先生の立場、一企業人として、果たすというのが、私たち一人一人の役割の中にあると感じている。

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■寺脇 研氏

4人の方々、すべてに共通していたのは、人と人とが交流するということ。そして、それは官がやるだけではなく、民と官のやること、両方が大事なのだということ。そして、教育という話もあった。実は、教育基本法には、日本の教育の目的は、個性あふれる豊かな文化をつくっていくことにあると書かれていて、文化交流をしていくために、教育が不可欠だということも大事、教育の場を、それぞれの国だけではなしに、お互いの国が一緒にやっていく場をつくっていこうという話も出たと思う。今後これから文化交流を進めていく上で、私はずいぶんヒントを頂いたと思う。

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